前回、タイマーIC555を使ってLEDを点滅(Lチカ)させる方法を検討した。無安定モードで点滅させるのが基本的な使い方だが、これをシュミットトリガインバータとして使う方法があり、これで点滅させることができる。それならば、はじめからシュミットトリガインバータを使えばよいのでは?
シュミットトリガインバータとは
「シュミットトリガインバータ」は、「シュミットトリガ」な「インバータ」である。
ここでいうインバータは、入力信号を反転させて出力する回路、すなわちNOT回路を意味する。ある電圧以上の入力でオフ、以下の入力でオフとなる。

オンのときはオフ、オフのときはオンになる、ただそれだけ。
このインバータのうち、ヒステリシス特性をもったものがシュミットトリガインバータである。オフからオンになるときの電圧と、オンからオフになるときの電圧に差があるものである。これを使うと何ができるのか.......。
コンデンサを使う
コンデンサという素子がある。金属板を平行に置いたもので、電圧をかけると電荷を蓄えることができる。また、その蓄えた電荷を放出することもできる。

スイッチをオンにしてコンデンサに電圧をかけると、ほぼ瞬時コンデンサの電圧が5Vになる。スイッチを切ると、コンデンサの中の電荷が放出されLEDに電流が流れる。このとき、LEDの前の抵抗の値によって放電するのに時間がかかるため、LEDはゆっくり暗くなっていく。
ここで、コンデンサの電圧が時間をかけて変化することが鍵になる。

静電容量C[F]のコンデンサと抵抗値R[Ω]の抵抗を直列をつなぎ、電圧E[V]の電圧をかけると、コンデンサの電圧VC[V]の電圧は、時間t[秒]とともに
と変化する。
逆に、コンデンサから放電するときは、
と変化する。

このような性質をもつコンデンサとシュミットトリガインバータを接続すると、点滅させる回路=発振回路を作ることができる。

シュミットトリガインバータTC7S14(東芝製)に、電源電圧4.5Vをかけ、10kΩの抵抗、47μFのコンデンサを接続したとき、どのように変化していくのかを順に見ていこう。なお、TC7S14の4.5V、25℃におけるHレベルしきい値は2.7V、Lレベルしきい値は1.6Vである(しきい値の意味はこのあとの文を読むことで分かるはず)。

1 スタート=入力オフ=出力オン
出力が抵抗を介して入力に戻るが、コンデンサの電圧と入力の電圧が等しくなるので、電圧はゼロ。
出力からは電圧がかけられ続けているので、ここから徐々に電圧が上がっていく。

約0.44秒後、コンデンサの電圧が2.7V(Hレベルしきい値)になり、インバータへの入力も2.7Vになる。ここで、インバータは入力がオンになったとして、その出力を反転させる。
2 入力オン=出力オフ

入力がオンになると、出力がオフになる。すると、コンデンサへの充電が止まり、コンデンサは放電を始める。

これがシュミットトリガではないインバータならば、電圧がちょっとでも下がった時点で入力がオフになる。しかし、このシュミットトリガインバータは、電圧が下がり始めてから0.24秒後、電圧が1.6V(Lレベルしきい値)に下がるまで入力はオンのままである。
3 再び入力オフ=出力オン

そしてまた出力がオンになり、コンデンサへの充電が始まる。

あとはこれを繰り返す。

点滅時間(オン+オフ)T[秒]は、抵抗R[Ω]とコンデンサの静電容量C[F]で決まり、
で求められる。
シュミットトリガインバータは、タイマーIC555に比べてサイズが小さい。その他の部品もコンデンサ1個、抵抗1個でいいので、デューティー比50%でよければ、この回路が最も小さく安価だろう。

